「桜の咲く頃は…」
会員10060 石川佳弥子
去年10月、Y・y倶楽部の企画で幡豆町のヒューマンビレッジにお邪魔
させていただいた。
夕方近くなってから着いた所は海辺の岬一帯の林の中に佇む素敵な
別荘だった。
白いトレーラーハウスあり、ログハウスあり、煉瓦造りあり…、足元に
点る灯り伝いに秋草茂る小径を登って行くにつれ色んな建物が姿を
現した。
「素敵 …」 こんな所に来てうっとりしない女なんていない。
中に入り特別サイズのスクリーンに映る映画を見てぼーっとしていた
私は再び驚かされた。
スイッチ一つでするすると上がったスクリーンの後ろは壁いっぱいの
ガラス窓。
その向こうに広がる夕暮れの海! 声にならない声が沸きあがる。
「… … 生きてて良かった」 (そこまで言うか)
陽は海に落ち、私達は夜風に吹かれながら、広々としたテラスでワインを
飲んだ。 テーブルにはそれぞれキャンドルが灯りほんのり赤くなった
私達を照らしている。
こんなシュチュエーションにうっとりしない女はいない。
(ここに座っているのが友達でなく、長瀬智也だったら…)
「桜が咲く頃またいらっしゃい。 一般公開していますから」
うっとり続きの私達の耳に榊原オーナーの信じられない言葉が響く。
えっこんな私がまた来てもいいの ?
ということで今年の桜が咲く頃をひとしお楽しみにしていた私。
そして再び来てしまった私。
桜は儚げで華やかで柔らかく私を迎えてくれた。
足元には秋にはなかったシャガの花がつつましげに咲き乱れ、
竹林が青く清々しい。
榊原オーナーは半年前と同じく「どうぞどうぞ」と何のこだわりもなく別荘の
中へと招き入れてくれる。 うれしいだけでは言い表せない気持ちで
いっぱいになる。
オーナーには一度ゆっくりお話いただくつもりだ。
なぜこんな素敵な場所を惜しげもなく公開できるのかと。